『砂の女』安部公房
煮え立つ水銀のような太陽が、砂の壁のふちにかかって、穴の底をじりじりと焦がしはじめていた。その突然のまぶしさに、あわてて目をふせたが、次の瞬間、もうそのまぶしさも忘れ、ただじっと正面の砂の壁を凝視するばかりだ。
信じがたいことだった。昨夜あったはずのところから、縄梯子が消えていたのだ。
海辺の村人にだまされて、アリ地獄に落とされた男の話です。
その村は砂漠化が進んでいて、毎日砂を掻きだしてないと、たちまち村の家々が砂に埋もれてしまうものだから、村人たちは労働力を欲していて、それでたまたま昆虫採集に来てた男を騙して、大きな砂のくぼみの家に宿泊させて、翌朝ハシゴを外して、二度と出てこれないようにしました。
ほんとにひどい話です。
男はいろいろ策を弄して脱出しようとするんですが、ことごとく失敗します。
砂の家には女が住んでいて、とても献身的に働きます。
砂を掻きだす仕事もするし、食事を作ったり、洗濯したり、家事も完ぺきにこなします。
そして砂のこともよく理解しています。
男と女は砂まみれの生活をします。
ほんとにつらそうなんだけど、まあまあエロティックなことも起こるので、救いもなくはないです。
読んでると喉がからからになります。適度な水分をとりながら読み進めることをおすすめします。