『風琴と魚の町』林芙美子
父は風琴と弁当を持って、一日じゅう、「オイチニイ オイチニイ」と、町を流して薬を売って歩いた。
『風琴と魚の町』の舞台は尾道です。
主人公の娘が、父と母と行商に歩きます。
父は風琴(アコーディオン)を鳴らしながら口上をのべて、尾道の人たちに薬を売り歩きます。
一家はとても貧しくて、食うものに困っています。
れんこんの穴にからしを詰めた天ぷらを、母と娘はわけあって食べ、それでもお腹が空いている娘は、タコの足を揚げている露店の誘惑に勝てません。
「タコの足が食べたいなァ...」と洩らして、母親にビンタされてしまいます。
それでも父の薬が売れはじめ、一家は少しずつ食べられるようになってきます。
娘も学校へ行きだしたり、魚屋のせがれに恋心を抱いたりと、上向きます。
うまくいきかけたところで急転直下、仕入れた化粧品のせいで父が警察に連行されてしまいます。
追いかけていった娘が見たのは、警察に殴られながら唄わされる、父の屈辱的な姿でした。
とにかく貧乏はしんどい、ということが伝わってきて、心が折れそうになります。
救いは、主人公たちも言っていたけど、尾道の海風が気持ちがよさそうなところ。一度行ってみたいです。