ひょっとこ日記

おもしろい小説を紹介します。

『プールサイド小景』庄野潤三

夕風が吹いて来て、水の面に時々こまかい小波を走らせる。

やがて、プールの向こう側の線路に、電車が現れる。勤めの帰りの乗客たちの眼には、ひっそりしたプールが映る。いつもの女子選手がいなくて、男の頭が水面に一つ出ている。

『プールサイド小景』は、会社をクビになった青木氏が、学校のプールサイドに突っ立って、女子水泳部を眺めているところから始まります。

なかなか悲哀を感じさせるはじまり方です。

青木氏は会社の金を使い込んでしまって、それがバレてクビになりました。

奥さんはうなだれ、子供は会社に行かないお父さんと遊んでもらえるから喜びます。

 

でもこれを機会に、奥さんは夫から、今まで聞くことのなかったいろんな話を聞きます。

よく行くバアの話とか、会社で感じていることとか。

そういうことを通して、奥さんはだんだんこういう生活、つまり、朝起きて夫が会社に出かけて行かない生活に慣れてきて、この方が幸せなんじゃないかとか、思ったりします。

 

でもまあ、働かないと食っていけないわけで、青木氏がまた新たな一歩を踏み出すところでこの話は終わります。

 

青木氏行きつけのバアに行ってみたいなと思いました。青木氏いわく、そのバアはとても安くて、美しくて素っ気ない姉と不美人でスローモーションの妹、それに梅干し婆さんがいるそうです。こんな蠱惑的なバアがあるでしょうか。

 

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